祝!1周年!




8月25日でサイト一年たったよ記念。アンケ結果をもとに、1位を小説にさせていただきました。






大好きのゆくえ






朝日がキラキラと窓から差し込んでいる。
珍しく先に起きたら、目線のすぐ下にあったアンナの髪がそれに反射して、負けないくらいにキラキラしてて。
あんまり綺麗なもんだからしばらくなでてみる。これまたびっくりするくらい指がすべる。

アンナはなでられて少し「ん・・・」と身じろいだが、すぐに元通り小さな寝息をたてた。眉根の寄っていない安らかなその寝顔は、多分、いや!絶対オイラしか知らん。別人っていうか・・・白くて、天使みてえだ。

もっと触れたい。近づきたい。頭に置いた手をそのままに、体をずっ、と寄せて髪に口付けた。少し冷たくてつるつるしてる。最高のごちそうをいただいとる気分だ。

手をずらして、アンナが起きるかもとか関係なく肩をつかんで自分の方へ引き寄せる。さすがにこうまですれば二人の間に距離はなくなった。全身でべったりくっついて、何度も唇を落としながらその位置を顔の方に移動していった。

アンナの首の上で一番やわらかいほっぺ(いや耳たぶかもしれん)にきたとき、出来る限り最大の愛情を込めてちゅ〜っとした。そこで愛しの嫁はやっと目を覚ましたわけで。

まだ半分寝ぼけて事態を把握できてないアンナは、ぼーっと無垢な瞳でオイラを見つめていた。

・・・あー。かわいい。

アンナの全部がオイラにとっては宝石だ。口元がニヤけて、顔がゆるむのを我慢できない。とりあえず2cm先にあった鼻をぺろっとなめてみた。

「おはよ。寝たかったらまだ寝ててもいいぞ?」

「・・・!」

やっぱり殴られた。だが後悔はしていない。

「あたしいつか、あんたに食い尽くされちゃうんだわ。この食欲魔人」

「なんだそれ、ロリータ魔人じゃあるめえし。・・・でも否定できねえかも!美味いに決まっとるし!でもそれじゃあアンナを失うことになるからそいつは嫌だ〜う〜んう〜ん」

・・・などと真剣に考えていると、バカなこと言ってないでさっさと離れろと赤い顔で怒鳴られ、顔面に強大なチョップをくらった。




笑わないで聞いてくれよ。ほんとは、否定できんとかいうレベルじゃなくてだな。

例えば後ろ姿を見ただけで、お前の全てを食っちまいたい衝動が走るときがある。特に理由もないってのに、こんなオイラは重症か?









あたしは人に思われてるより、自分中心なのかもしれない。

あんたの存在が愛おしくて、腹立だしくて、誰よりも気になってしょうがない。だからたまに後ろ姿にもムカつくの。髪一本残さず引っこ抜いて、めちゃくちゃにしてやりたくなるときがあるわ。いや、まずは一発入れてやろうか。殴りたい―・・・触りたい?

理由なんて知らない。ただの怒りとは違う、嫉妬だけってわけでもない。こんな気持ちの名前あたし知らないもの。

今、目の前がそんな状況。二人で散歩してたら偶然修行中だった蓮とホロホロとチョコラブに会った。珍しくリゼルグくんもいた。おつかいの帰りだという。

5人の戦士が予告もなしに揃うだなんて一度もなかったから、彼らは和気あいあいと盛り上がる。もともと仲が良いだけにかなり楽しそう。これに竜も混ざったらさぞ五月蝿かったのが簡単に予想できる。

ああ、そうでしょうね。その輪にあたしが入れるものじゃないのは知ってるわ。入ろうとも思ってないし。奴らだって最初軽いあいさつしてそれっきり、それ以降は存在無視。あたしの前に立つ葉とボケツッコミをひけらかす。

こいつらは別にいいわよ。でもあんたまであたしを無視するわけ?楽しそうなのはいいけど、あたしずっとここに立ってるのよ?

忙しいファイトの合間、今日は久しぶりに二人っきりで散歩行こうってあんた言ったじゃない。だから午前中の修行も休みにしてやったのに。天気もいいし、あんたとゆっくりした時間を一緒に過ごせると思ったのに。

ヘッドホンでまとめられた黒髪を穴が開くほど見つめても、状況は変わらない。

こっち、向いてよ。

葉が何かを言いながら一歩前へ足を踏み出した。あたしは思わず――手を、伸ばし―――

くいっ。

「ん?」

ふわっと風の抵抗を受けたYシャツのすそを、引き止めるように掴んでいた。

葉はぽかんとした顔でやっとあたしを見た。蓮たちまで無言になってるから、あたしは掴んだ手の行き先がわからない。やだ、恥ずかしい・・・あたし多分今顔まっ赤・・・。バカ男共こっち見てんじゃないわよ。

「アンナ・・・?」

数秒の沈黙(葉以外)の後、リゼルグが大げさに咳払いをした。

「あー蓮くん、僕達そろそろ行こっか?」

「そうだな。修行を再開するぞ貴様等」

「OKOK!どんと来ォい☆」

「あ??何でだよ?」

「いいから行くぞバカホロ」

「えーだってまだ・・・いででっ耳引っ張んな蓮てめー!いででっ」


その場に二人だけが残ると、あたしはやっと手を離すことができた。

こんなことをしてしまって、何を言っていいのかわからない。緊張しながらゆっくりと顔を上げた。

「葉・・・。・・・葉?」

向き合った旦那は変な顔をしていた。あえて説明すると赤くなって、でも真面目な表情で少し興奮気味。感動してるようにも見えるけど眉根にしわが寄ってる。

言い表すのが難しいわね・・・でもホントこんな感じ。

固まっていたかと思うと即座に反対方向へ素早く歩き出し、あたしと数メートル距離をおいて急停止すると、自分のシャツのすそを自らガッと突き出した。

「アンナ!もー1回!!」

幻の左を最大風速で入れてやった。






「・・・おや?ちょっと、あれ葉くんじゃない?」

「マジだ!飛んでるじゃねーかあいつ。派手に弧描いてんなー」

「にしても幸せそうな顔だな・・・鼻血出てんのに。背景に虹までかかってる」

「どうせまた何か怒らせたのだろう。馬鹿な奴め」

「せっかく僕達が気を使ったのにねえ」

「全くだ」

「だから何の話だそれ?」

『こいつは・・・』






普段オイラからくっついても、アンナは照れながらいつも嫌がる。それがあいつなりの愛情表現だってのは重々承知しとるが、あっちから求めてくれるなんて全然まったく一度もなかった。

だから、もう嬉しくて!すそ引っ張って上目使いのアンナの可愛さといったら何て表したらいいかわからん!

生まれてきて良かった!足元を過ぎるかもめも祝福してくれとるんよ!(※飛行の邪魔になって文句言ってるだけ)

頭上に太陽が迫ってくる。光に包まれて宣言!オイラ、今、幸せです!!




-END-

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